BLOG

第一回:戦略人事はウチにはまだ早い、は本当か?
こうすれば一歩踏み出せる戦略人事への道

2020.07.07

こちらのブログはHRBPの設置や、各種人事施策の強化を通じて戦略人事を実現されたいという方のために「戦略人事の考え方」や「HRBPは作ってみたが何をすればいいのか?」といったお悩み、疑問・質問にお答えしていくものです。

そもそも戦略人事とは:デイブ・ウルリッチのフレームワーク 2020年4月に『最強の戦略人事』を東洋経済新報社より出版させて頂く前から、「どうやったら戦略人事を実現できるのか?」というお問い合わせを多くいただくようになっていました。背景としては、やはり事業環境の変化に応じて自社の戦略が変化し、求められる人財育成・組織開発のあり方も変化することが求められているということでしょう。
では戦略人事の理想形というか、あるべき姿、モデルを提示したのは誰なのかと言えば、皆さんご存知のデイブ・ウルリッチかと思います。モデルが提示されたのはだいぶ前になりますが、ウルリッチ教授による4象限モデルは今でも戦略人事の標準モデルとして引き合いに出されることが多いかと思います。

戦略人事もしくはHRBP(Human Resource Business Partner)と言った場合、左上の戦略パートナーや変革エージェントといったイメージが強いかもしれません。事実、企業によってはより「戦略」というニュアンスを高めるために、HRBPではなく役職名からHRをはずして「『人事施策のみにとらわれず』、必要であればその他の手段も講じて企業・事業部・部門の業績に貢献できる人」としてSBP(Strategic Business Partner)というようにしている会社もあります。また世界的に有名な戦略コンサルティング会社に企業変革を依頼した苦い経験から「人と組織の側面を無視した変革はあり得ない」とういことで変革を担うための専門組織を社内に持ち、HRBPの機能もそこに統合してPerformance Consulting部門を持つ会社も出始めました。
戦略パートナーや変革エージェントという役割はともすると、華やかなイメージを持たれがちですが、戦略実現のための社内(外)の地道な交渉の連続等、かならずしも論理的に進むものばかりではありません。さらにHR-tech、従業員の労働価値の変化等、左下の人材管理のエキスパート、従業員のチャンピオンとしての力を発揮すべき分野がまだまだあり、これらを見落としていては戦略人事のもう一つの側面である人事関連プロセスの効率化は実現不可能です。

戦略人事への取り組み:組織活性化の観点から しかし、いろいろなお客様に戦略人事への取り組みをお伺いすると、ほぼ必ずと言っていいほど頂くのは「うちはまだまだ戦略人事なんて程遠い」や「部門人事はいるけど、『御用聞き』のレベル」、というものです。しかし、現在の業務内容、取り組み内容をお伺いすると、ウルリッチ教授の戦略人事フレームワークの内、左下・右下の分野で多大なる貢献をされており、「うちは戦略人事なんてまだまだ」というのはいささか謙遜しすぎではないかと思うことが多々あります。
(ちなみに、筆者はグローバル企業2社にてHRBP組織の立ち上げを含む人事部の変革、HRBP統括等の経験をしてきましたが、グローバル企業と言えども、デキルHRBPというのはほんの一握りという実感があります。グローバル企業では英語が共通言語になり、外国人のマネジメントの対応をするためにハードスキルとしての英語が過度に重視され、外国人ウケはいいが日本人からは嫌われているHRBPや、変革施策実行の際の論理と感情のバランスの取れたコミュニケーションの欠落等、ビジネスパーソンとしての基本が欠けている、いわば『御用聞きにすらなっていないHRBP』等の事例を数多く知っています。HRBPの形は様々であり、また完成形はまだないというのが実情ではないでしょうか?)

先日も複数のあるお客様より「うちは部門人事はいるが、まだまだ戦略性は足りない」というご相談を頂きました。そこでいつものように現在のお取り組み内容についてお伺いすると、大きく2つあり、一つは「従業員満足度調査(ES調査)、もう一つはストレスチェックで、この2つのとりまとめと対応策の立案、部門へのフィードバックをされているとのことでした。どのお客様も大組織を運営する会社ですので、何の調査をやるにせよ、部門への通知、回答の回収、分析、フィードバックの一連のプロセスを回すだけでも結構な労力がかかると思います。

まずこの2つの業務(ES調査とストレスチェック)ですが、人財管理のエキスパートと従業員のチャンピオンの2つに該当する業務と言えます。一見、地味な仕事に見えますが、従業員のデータを大量に取るのは年に何度もできるわけではなく、この2つの調査をきちんとまわしつつ、その他の従業員の属性データを足していくことができれば、人事施策を立案し部門を巻き込む際の超強力な武器に転換させることができます。
またベストセラーにもなった『「辞める人・ぶら下がる人・潰れる人」さてどうする?』という本を書かれた産業医でもあり経営者でもある上村紀夫さんは同書の中で非常に体系立てられた見方を提唱されています。(著者の上村さんには近々、弊社の別コーナーにてインタビューにご登場いただく予定です。乞うご期待!)

著者の上村さんによると組織活性化のためには事業の目的(Purpose)や社会的意義といったもので表される「働きがい」から仕事のしやすさを示す「働きやすさ」、そして組織内の従業員の精神的・身体的な健全性を示す「心身コンディション」の3つをトータルで整える必要があるということです。そして、この頂点にある「働きがい」はピラミッドの下にある「働きやすさ」、「心身コンディション」への打ち手が無ければ実現はままならないということをいろいろな事例をあげて証明されています。 先にあげたES調査は「働きやすさ」の状況をあぶり出し、ストレスチェックは「心身コンディション」を明らかにします。この土台があってこその「働きがい」の実現であり、戦略人事の実行なのです。 現在の取り組みが「戦略的ではない」とする前に、少し違った見方をして、その重要性を再度ご認識頂くとともに、現状の取り組みを整理して「Start/Stop/Continue」を部内で話し合うだけでも活動をアップグレードすることが可能です。

明日からできる戦略人事:PPTIという考え方 さて今度は話をHRBPに戻します。「うちには戦略人事はまだ早い」というお声を多数頂戴すると同時に、もう一つ、「うちにはHRBPができそうな人がいない・・・」、「どこから手をつけていいのかがまだイメージできない」というお悩みを頂戴することも多くあります。声を大にして「ご安心ください!」と言いたいのですが、そうは言っても現状の人事部内の業務量や、現場から優秀なスタッフをHRBPとして異動させるにしても部門長との交渉やヘッドカウントの調整など、いろいろな課題があることでしょう。
私たちの『最強の戦略人事』ではHRBPは戦略・組織・人のアラインメントを実現する役割とし、その最も高度なスキルとして『組織デザイン』をご紹介しています。この組織デザイン能力は変化の時代にあって必須の能力なのですが、本コラムでは皆さんが明日から使える「PPTI」というフレームワークをご紹介したいと思います。

このPPTIは縦軸に顧客ニーズを取り、横軸にそのニーズを満たすための4要素であるPPTIを取り、下記の事例のような「問い」を投げかけていきます。

Process: そのニーズを満たすための業務プロセスは整備されているか、十分に効率的か?
People: そのニーズを満たすための人財像は明らかになっているか、現在のキーパーソンは?
Tools & Technologies: そのニーズを満たすために現場の社員が使えるツールやテクノロジー(例:データ分析ツール等)は何か?
Information: そのニーズを満たすために必要となる情報は何か?

縦軸のニーズは本来は社外のお客様=自社の製品・サービスに対して対価を払ってくださる方々のニーズを入れるのですが、手始めに人事の社内顧客、例えば事業部長が考えていることを拾い出しても良いと思います。「事業部長が考えていることを伺って、人事としてどう貢献できるか考える材料にしたい」と言われて悪い気がする人はいません。
それでも部長以上にいきなり聞きに行くのはちょっと・・・という方はたとえば課長クラスやご自分の同期にPPTIのフレームをつかってヒアリングをしまくり、あつまった情報を匿名化して、

「部長の方針(ニーズ)は課長層までは完全に浸透していて、具体的な取り組みが始まっています。しかし、〇〇課では承認プロセス(Process)が若干非効率という意見が多く、残業も増加傾向にあります。また◇◇課では戦略方針のアップデートをタイムリーに行ってくれれば(Information)、現場で迅速に手が打てるといった声もありました。ついては人事としては××のようなサポートが可能です。」

と報告するなどを継続すると、ちょっとイケてる人事パーソンに近づくことができます。 (テクノロジーは主に情報システム部門の役割と考えていることは無いでしょうか?それではジョブ型がメインになりつつある近未来を生き抜いていくことはできません。情報システム部もHRBPのようにBusiness Analyst(BA)という役割が拡大しつつあり、標準的な方法論もできています。人と組織をメインにしたHRBP、テクノロジーをメインにしたBA、ファイナンスをメインにしたFP&Aというように、お互いに協業できる能力を持っていなければならないのです)

筆者も事業会社にいたころは、部門のいろんなレベルの人を捕まえて、その部門の目指す方向や実現にあたっての課題をヒアリングしまくり、事業部長にはPPTIのフレームで整理して報告するということを欠かさずに実施していました。
シンプルなフレームワークではありますが、ニーズを満たすために人事として影響力を及ぼすことのできるPPTIの観点からうまく行っていること、課題を洗い出し、事業部長や経営陣との対話ツールとして使うことは、戦略人事の能力構築の第一歩としては非常に有効です。ぜひ、今現在の活動に加えて、PPTIを意識しながら社内の部署や業務を見るようにしてみてください。

(PPTIを含む、いくつかのフレームワーク、ツールを使えるようにするHRBP育成トレーニングBasicも承っております。詳しくは info@invenio.jp よりお問い合わせください。)


>>詳しいガイドはこちら

>>定期的に開催しておりますWebinarはこちら

この記事をシェアする