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コーチングの真価を発揮させるためのアクティブリスニング

2021.06.10

アクティブリスニングスキルを開発する 部下育成、組織開発の有効なアプローチとして、日本でもコーチングがかなり普及したように見えます。しかしながら、普及したからこそ、基本となるスキルセットが忘れ去られ、いつしか「相手に問いかける」『だけ』、」「相手に考えさせる」『だけ』の形をなぞるだけのコーチングが蔓延しているとお感じになる方も少なくありません。

アクティブリスニングを駆使し、フィードバックを提供することは必ずしも簡単ではありません。ただでさえ日々の業務に追いかけられることが多く直属の部下の指導に集中する時間とエネルギーが限られています。しかもコロナ禍ではリモートでマネジメントを行う機会が増えて、これまで対面で実施していたようにはいかない状況に苦労されている管理職も多くなっています。

このような状況でフォーマルなコーチングの場は限られているかもしれませんが、部下との対話の一つ一つの瞬間をコーチングの機会として捉えて、自分自身の会話をコーチング的にしていくことは可能です。秘訣は、注意深い聞き手になり、コーチング手法が活用できそうな瞬間を見極めてコーチングを提供することです。その準備をするための鍵となるスキルがアクティブリスニングスキルです。

アクティブリスニングは、相手が話していることを完全に吸収し、理解し、応答し、記憶にとどめるための貴重なテクニックです。聞き手は、積極的に聞き取りをしている間、メッセージをよりよく理解するために、言語情報だけではなく、非言語情報であるボディーランゲージに細心の注意を払うこともあります。

6つのアクティブリスニングスキル アクティブリスニングのスキルセットは6つのスキルから構成されます。

① 注意を払う:Paying attention
② 急いで判断しない:Withholding judgment
③ 映し出す:Reflecting
④ 明確化する:Clarifying
⑤ 要約する:Summarizing
⑥ 共有する:Sharing

① 注意を払う:Paying attention アクティブリスニングを駆使し、効果的な聞き手になることの第一の目標は、コーチングを受ける相手が自ら考えて話す機会を与える快適な空気を創ることです。

問いかけに対して応える前に自分自身で考えるための「持ち時間」を提供します。コーチングを提供している相手の思考を断ち切ったり、言語化するためにキーワードをメモしていたり、考え終わる前にコーチが答えを提供してしまってはいけません。

その瞬間に集中し、聞き手として尊敬の念を持って行動します。

② 急いで判断しない(Withhold judgment) アクティブリスニングには自分自身にかかっているバイアスに警戒するマインドが必要です。

聞き手、そしてリーダーとして、アクティブリスニングを実践するときは、新しいアイデア、新しい視点、および新しい可能性を受け入れてください。

たとえ自分自身が良いと信じるアイディアや意見を持っているときでさえ、コーチ、リーダーは良い「聞き手」として、自分自身のアイディアを売り込んだり相手を説得しにかかることはありません。自らの判断をいったんは保留し、話し手の考えを批判をすることなく良い聞き手であり続けます。

③ 映し出す(Reflect) 皆さんが聞き手であるとき、皆さんがコーチングをする相手のことを正しく理解している、または皆さんが開いてからの話を聞いたことをもって相手のことを十分に知っていると思い込まないようにしましょう。

聞いた内容の重要なポイントを定期的に言い換え、コーチである皆さんの理解と感情を映し出していきます。相手の話した内容を言い換えて二人の間に映し出し、見えるようにするのことで皆さんと相手が同じ風景を見ていることを示すアクティブリスニングテクニックです。

たとえば、相手が次のように言ったとしましょう。 「Aさんの部下はAさんにとても忠実ですし、協力的です。彼らはAさんの為にどんな無理難題でもやってのけてきました。しかし、私からの依頼に対しては私がいくら締め切りを守るようにお願いしても全く言うことを聞いてくれないのです・・・」

これを言い換えると、「Aさんの部下の実行スキルは素晴らしいですが、自分から依頼した仕事の締め切りを守れないことの説明責任は問題です」と言うことができます。

「他に何をしたらいいのかわからない!」や「土壇場でチームを救済するのにうんざりだ!」と聞いたら、ぼやいている相手が自分自身の気持ちにラベルを付けるのを手伝ってあげてみてください。「かなりイライラして、立ち往生しているように聞こえますね。」というだけでも相手と同じ土台に立つことができるのです。

④ 明確化する(Clarify) アクティブリスニングを行う際に、あいまい、または不明確な問題については遠慮なく質問しましょう。

聞き手として、相手が言ったことについて疑問や混乱がある場合は、「念のため私の理解を確認させてもらえますか?あなたは・・・について話をしているのですか?」と言って明確化の第一ステップを踏みましょう。

相手が自分自身の立場を正当化するのを助けてしまったり、相手が言いたいこと・伝えたいことを推測しようとするのではなく、明確化の為の質問を投げかけることで相手に内省を促してみたり問題解決のための建設的な思考に乗せてあげるための重要なアクティブリスニングツールです。

例としては、
「・・・についてどう思いますか?」
「・・・について教えてもらえますか?」
「もっと詳しく解説/説明していただけますか?」 等です。

アクティブリスニングを行う場合、話すよりも聞くこと、尋ねることに重点が置かれます。それは相手に内省を促し、協調的な気持ちを維持させるのに役立ちます。

「あなたが試した具体的なことは何ですか?」
「チームに何が大きな心配事なのか尋ねましたか?」
「Aさんはパフォーマンスの問題があることに同意してますか?」
「何が起こっているのかの全体像を掴んでいると言い切れますか?」と尋ねてみるといいかもしれません。

⑤ 要約する(Summarize) 会話が進むにつれ、重要なテーマを言い換えることで、相手の視点を確認し、しっかりと把握できます。また、両当事者が相互の責任とフォローアップについて明確にするのにも役立ちます。アクティブリスニングの実践を通じて理解したことを簡単に要約して相手に伝え、相手にも同じことをしてもらいます。

コーチされる人が提起したコアテーマを簡単に言い換えると、次のように聞こえるかもしれません。

「私の理解を確認するために要約してみます。Aさんはマネージャーに昇進し、Aさんのチームは彼女を慕っています。しかし、あなたはAさんが彼らに説明責任を負わせているとは思わないので、あなたからの依頼に対しては締め切りは守られずにいまでも仕事の遅れが発生しています。これまでに考えられるすべてのことを試しましたが、明らかな改善の兆しは見られません。これであっていますか?」

重要なテーマを再確認することで、両当事者が相互の責任とフォローアップについて明確にすることができます。

⑥ 共有する(Share) アクティブリスニングとは、まず相手を理解することであり、次に聞き手として理解されることです。相手の視点をより明確に理解するにつれて、自分の考え、感情、提案を紹介し始めることができます。同じような経験について話したり、自分なりのアイデアを共有したりすることもあるでしょう。

このように相手と自分の置かれている状況が話し合われ、共有されると皆さんと相手が共に「何に取組もうとしているのか」、「どのような問題を解決しようとしているのか」がよくわかります。アクティブリスニングを通じて、丁寧にピースを積み上げてきましたが、この「共有」のステージから会話は問題解決に移ることができます。

「まだ試していないことは何か?」
「私たちが実はまだ知らない情報は何だろうか?」
「状況を丁寧に共有した後には、どのような新しいアプローチを取ることができるでしょうか?」

コーチとして、引き続き質問、提案を行いますが、解決策を指示しないように注意しましょう。相手は自らが解決策のオプションを考えて選択できればより自信と熱意を感じるでしょう。

アクティブリスニングスキルの磨き方 ここまで6つのアクティブリスニングスキルが何であるかを見てきましたが、皆さん自身がアクティブリスニングを実践できているかどうか、チェックしてみましょう。

多くの人が傾聴の重要性を理解し、自分自身でもアクティブリスニングスキルを持っていると信じています。

しかし、真のアクティブリスニングスキルの開発は簡単なものではありません。批判をうまく受け入れ、人々の感情に対処し、他の人が何を考えているかを理解しようとすると、ここまでに見てきたように6つのスキルが必要であり、実践し、経験を積む必要があります。自分自身が最善を尽くしても、実際には“まったく聞いていない”というサインをを無意識に相手に送っている可能性もあります。自分自身の『アクティブリスニング力』をチェックしてみましょう。

相手の話に集中するのに苦労することがある
相手の話を聞くよりも、次に自分が何を言うべきか考えがちである
相手が自分自身のアイデアや行動に関して質問されるのを嫌がったり、面倒がったりすることがある
相手が彼らの視点を完全に説明しきる前に、自分がさっさとアドバイスを与え、問題の解決策を提案してしまうことがある
相手が自ら考え、選択するように促すよりは自分自身のアイディアを先に出してしまう
相手よりも自分自身が話す時間の方が長い

これらの質問の全てに「いいえ」と答えるのは優しいことではありません。誰もが一つは「はい」と答えてしまう質問が並んでいます。それくらいアクティブリスニングスキルに注意し、スキルを高めていくことは難しいものなのです。一方で次のようなヒントを実践するだけでもアクティブリスニングの力を高めることができます。

1. 気を散らせるものを無くします。スマートフォンやタブレットなどのデバイスから音が出ないようにし、気を散らすものから離れて、相手に十分な注意を払うことができる環境を創ります。その人の声の調子やボディーランゲージにも注意してください。

2. 自分が言いたいことではなく、自分に言われていることに注意を払います。

3. 沈黙は悪いことではありません 常に返事をしたりコメントしたりする必要はありません。対話が中断してしまっても、それは自分の考えをまとめる時間として使えるのです。

4. 相手に与える前に、相手が相手自信にアイディアや解決策を与えることを助けてあげます。聞くこと80%と話すこと20%の配分の実践をするだけでも相手に考える機会を上げていることになります。

5. 聞いた要点を言い直して、自分の理解が正確かどうかを尋ねます 。「あなたが話してくれたこと私が正しく聞けているかどうか、ちょっと確認させてください。」ミスコミュニケーションを無くすシンプルですが有効な方法です。

相手に対する配慮を忘れない良い聞き手であることは皆さんが良いリーダーであるためにも重要なことです。良い聞き手であり続けることで、同僚や直属の部下は皆さんをより尊敬し、その結果として、対人関係がより良くなる可能性が高くなります。アクティブリスニングスキルを向上させることはリーダーシップ向上にもつながることなのです。

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