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「組織開発の探求:25年以上の歴史と真髄」
AlignOrg Solutions
プリンシパル ケン・トンプソンさん

2020.06.29

オープンイノベーション、DX実行戦略、CXの先のEX、「両利きの経営」等、不確実性の高い事業環境の中で様々な経営手法が提唱されています。しかし、私たちが本当にこの嵐のような世界を疾走するには何をすればよいのでしょうか?元々、軍隊でパイロットの訓練士官からビジネスの世界に身を投じ、戦略を実現するための組織デザインに携わるようになったケン・トンプソンは「何を見るかではなく、どう見るか。それによって自分たちのビジネスも組織もまるで違って見える。」と言います。

◆ケン・トンプソンさんの略歴◆
米コンサルティング会社「AlignOrg Solutions」のプリンシパルで、企業のターンアラウンド戦略と組織設計、運用効率、アカウンタビリティ主導のリーダーシップを含む成長管理における豊富な経験を持つビジネスリーダーとして、組織を成長させるスペシャリストです。組織の再設計、ベストプラクティス、テクノロジー、人材の採用、戦略、卓越した運用など、適切なフレームワークを提供することにより、急成長や停滞する企業を支援します。
アメリカ国防総省のロジスティクスやサプライチェーンからアパレル業界に至るまで、さまざまな業界を手掛けてきました。重要な組織変革を擁護し、優れた運用を生み出し、リーダーシップ開発と従業員の改善プログラムを実施して、大きな成功をもたらしました。

フレームワークの違いによって異なる世界が見える

この組織デザインという仕事を始めたきっかけを教えて下さい。

私はMBAを取得した後、組織デザインを学ぶ機会に恵まれました。なぜ組織デザインを学ぼうかと思ったかというと、私自身の大規模な組織をリードするというリーダーシップ経験と組織デザインの主要概念・コンセプトを組み合わせることで、私が取組んでいた研究に新たな活路と洞察を見出すことができるかもしれないと教わったからです。

組織デザインについての学習を修了した後で自分の組織を見てみると、全く違って見えるようになっていることに気が付きました。複雑で戦略的な問題を理路整然と体系立てられたフレームワークで整理・分解し、組織に効果的な変革を加えることで、市場での自社の地位を劇的に向上させることができたのです。

その後も大規模な組織で様々なリーダーとしての役割を進めていくうちに、自分のスキルと業務プロセスや評価、必要となる人財モデルといった組織の重要な側面のそれぞれを整合させていく(=アラインさせていく)力について理解することに磨きをかけることができました。

これらの経験を通じて、最終的に私は、この組織デザインの手法を使って、より多くの方々が所属する組織をより良いものにしていくことを手助けできると感じるようになりました。この感覚が私をアラインオルグ・ソリューションズに導いたということになります。

アラインオルグに来てからの私は何年も前に学んだ組織デザインの考え方を適用し世界のリーディングカンパニーのトップや複雑な組織を率いるダイナミックなリーダー達と協力する機会を得ました。以前と今での唯一の違いは、組織デザインに関する実践的な知識を強化してきた長年の経験があることです。



クライアントの成功体験

この仕事の一番のやりがいや大変なことは何ですか。

私は元々は軍人ですが、私は軍と企業との類似点にしばしば遭遇します。すべてが同一であるというわけではありませんが、私が軍隊で培ったバックグラウンドは企業が直面する難しい意思決定にどのように対処すれば良いのかの指針を明らかにしてくれる時があります。

最近、私はある会社のリーダーと共に彼が率いる会社の戦略を完全に再定義するための支援をしていました。戦略の再定義は順調に進み、彼自身も非常に興奮していた一方で、彼はまだしっかりと目に見えていない未知のものを描き出すことについて若干、神経質になっていると私に打ち明けてきました。 彼がその話をしてくれたとき私の頭には航空業界で「可視性」と呼ばれるものに非常に似ていると思いました。 そして、私は次のようなエピソードを思い出したのです。

何年も前、私はAH-64アパッチ(攻撃ヘリコプター)の指導官として勤務していました。ある日、訓練中のパイロットに実射訓練をしていたとき、機体が予期せぬ天候に遭遇したのです。数秒のうちに、私たちは厚い霧に飲み込まれ、私たちの視界はあっという間にゼロになりました。視界がゼロになったときの緊急復旧手順を開始した時、私は訓練中のパイロットが自分の行動を知っているかどうかがひっかかりました。パイロット協会(AOPA)等によると、突如として視界がゼロになった場合、86%が死亡につながります。攻撃機では、可視性は最も重要な競争上の要素の1つです。悪天候、敵の待ち伏せ、または指定部との通信遮断などにより、可視性が低下すると戦略的リスクが高まります。訓練任務であろうと実際の戦闘状況であろうと、成功(そして生存)は、パイロットが機体を取り巻く環境を正確に認識し、適切な判断を下す能力に左右されるのです。したがって、軍隊では、可視性を持ち、高め、そして強化するためにあらゆる努力をしています。軍用機は、レーダー、防音、諜報部員からの報告、ドローンから送られてくるデータなどの多くのリソースを活用し、厳しい訓練と不測の事態に備えた計画に加えて、敵を超えて、または大自然の気まぐれにかかわらず、可視性を高め、競争優位性を獲得します。私たちが予期せぬ突然の事故に遭遇したその日、私たちはありとあらゆる情報を駆使することによって「可視性」を保ち、そして私たちは助かったのです。定められた緊急復旧手順を実行し、計器の情報を見て判断するというアプローチで飛行場に無事、帰還しました。

今度はビジネスの世界における「可視性」=見える事による競争優位性について、お話したいと思います。 私は企業の顧客と仕事をしている時に、ビジネスにおける可視性、つまり企業がどのように物事を認知するか、気が付くかという能力も優れた企業の意思決定と組織の成功の鍵であることに気づきました。すべての組織には、競合他社による未知のアクション、市場への新規参入者、不安定な経済、制裁または関税など、未知の要素が持ち込まれ、深い霧を形成して私たちの可視性を低下させることがあります。私たちはそのような霧の中で組織の目標を実現するために、自らをナビゲートしなくてはならないのです。しかし、深い霧の中で可視性が制限されていても、私たちは必要な判断と意思決定を行わなくてはなりません。予期せぬ事態においても、事前の入念な予測と対処のための準備を行っておくことで九死に一生を得ることもできるのです。

話を元に戻しましょう。戦略の再定義はうまくいったのに、見えないものに対する不安を抱えていた私のクライアントであった、ある企業のリーダーは私の軍での経験談に聞き入っていましたが、話し終わると彼の表情は明るくなっていました。彼は自信を取り戻し、再び私たちと共に戦略的組織デザインのプロセスに参加したのです。 半年後、彼と私はニューヨークで、この組織の驚くべき成功を披露するためのステージに立っていました。彼の顔に見えないものに対する不安はもはやなく、私とアラインオルグ・ソリューションのチームに対して深い感謝の意を表明してくれたのです。

私たちが支援する組織デザインの全てが成功裏に終わるということを言うつもりはありません。しかし「私たちはあなたなしではこれを行うことができなかった」、または「私がいつも夢見ていた結果を目にしている」と多くのクライアントから言ってもらえることも事実です。このクライアントからの言葉こそが私がここにいる理由であり、私が組織デザインという仕事に情熱を傾けることができる理由です。

ウィズコロナ/アフターコロナ時代の新しい組織戦略

未来の展望についてはいかがでしょうか。

少し前に私はある記事を書きましたが、そこに私なりの答えがまとめられていると思います。

~ 嵐の中の疾走–新しい時代のための新しい組織戦略 ~ 
既に目の前にある第4次産業革命とCOVID-19がどのように世界を変えるか。


バイクに乗ることは、いつもスリルとリラクゼーション、そして喜びの組み合わせであり、私はいつも爽快でした。バイクでの安全なツーリングには、熟練したスキル、反射神経が必要で、風を切る快感、肩に感じる日差しの暖かさ、そしてカーブを見た瞬間に完璧なコーナリングラインを見出すときの爽快感を別にすれば脳の能力のほぼ100%をフルに使う事が必要です。

ただし、バイクに乗る人はみな、いつの日か予期せぬ状況に出会います。これは、雨の中、嵐の中でバイクに乗るという状況です。 雨の中でバイクに乗るということは、晴れの日の状態とは全く違います。晴れの日での運転方法という古い習慣を捨て去り、新たな方法で不快な状況を切り抜けるということを意味するのです。雨水によって路面にオイルが溜まるとタイヤのグリップが弱くなり、降り付ける雨によって視界は悪くなります。濡れた道路でのカーブであまりに車体を傾けすぎるとカーブを乗り切るどころか、最終的な行き先が緊急治療室に着陸する可能性があります。

安全に走行するというビジョンを保ち、路面の状況などの複数のインプット情報を判断しつつ、適切なスピードを保つことが生き残るために不可欠になります。晴れた日に乾いた道路をバイクで走るように、多くの組織のリーダーはすでに「第4次産業革命」(4IR)に適応しています。彼らは4IRを生き残ったか、もしくは第3(デジタル)革命の頃に生まれ、物理学・生物学上の新たな発見や進歩、デジタル革命の中で自然に生きてきました。人工知能、ロボット工学、3Dプリンター、遺伝子工学およびその他のテクノロジーの進歩によってもたらされた変化に既に慣れているのです。

しかし、そんな人々にとってもCOVID-19(コロナウィルス)のパンデミックは、未曽有の危機ともいえるものでした。ほとんど想像もできない影響が、第4次産業革命の旋風に加わったのです。この誰も経験したことのない変化を乗り切るために、リーダーは戦略を柔軟かつ迅速に変化させる必要があります。つまり「嵐の中をバイクで疾走する」ようなものですが、戦略を立案し、戦略実行の為の組織を適切にデザインする手法を学ぶことにより、重要な進歩を続けることが可能になります。

ヘレンケラーが言ったように、「道路の曲がり角は道路の終点ではありません…あなたが曲がり角で転倒しない限り。」

COVID-19が加わった4IRの環境の中で、企業はどのような影響を受けるのでしょうか。私たちのビジネスの見方はすでに大きく変わりました。世界経済フォーラムのクラウス・シュワブ教授は、2016年の著書「第4次産業革命」で、4IRが「特に労働市場を混乱させる可能性」において、より大きな不平等を招く可能性があると述べています。教授は、雇用市場がますます分離され、渡井たちが“伝統的な仕事”と考えるものは大きく変化するだろうと述べました。


例えば:

◆ 営業リーダーは、新しい販売方法を見つける必要があります。
とりあえず、見本市に出展して多くのバイヤーに対応することバイヤーをもてなすための豪華なディナー、ティータイムのためのドーナツの準備は必要なくなります。デジタル・トランスフォーメーション(DX)によって売買の方法は永久に変わり、COVID-19のパンデミックは潜在顧客にリーチするための新たな方法を即時実践することを余儀なくさせました。

◆ チームメンバー間の関係も大きく変わりました。
リモートワークの利用はかなり普及しました。リーダーやマネージャーは、新しいマネジメント方法を見つけ、チームメンバーの生産性を上げていくことが求められます。

◆ 社内での仕事の進め方も半永久的に変わります。
マネージャーはリモートワークを通じて、チームメンバーを活き活きとさせ続けることができるでしょうか。リーダー自身を含む従業員が将来の雇用に関する不安を抱くことなく健康で安全に勤務し続け、組織の戦略と目標を維持するためにはまったく新しいスキルセットが必要とされているのです。


それでは、リーダー達はどのようにこの未経験の巨大な変化に適応すれば良いのでしょうか。将来の可能性のためには、これまでの前提条件を捨てなければなりません。ここ最近で私がクライアントである経営幹部と行ってきた一部を御紹介したいと思います。

真に戦略的な業務の特定
組織内で行われている業務の棚卸を行い、何がどのように行われているのか、どの業務が組織自体の戦略的目標の実現に貢献し、そうでない業務はどのように再調整すれば良いのかついて、経営幹部と話し合うのにかなりの時間を費やしました。重要なポイントはすべての業務が平等というわけではなく、どの業務活動が戦略実行と顧客への価値提供に直接結びついており、どれがそうでないかを理解することです。これは業務の重要性の評価ではなく、その業務が組織のどこで行われれば、顧客に対して価値を最も効果的かつ効率的に提供することができるのかを改めて評価し、検証するための議論と意思決定です。

変化への対応
業務が変更される場合(つまり、業務内容や業務プロセスの変更)、変化の大きさを甘く見積もるべきではありません。たとえば、従来型の対面販売形式からオンラインでの販売に切り替える事例があるとします。 経営幹部やリーダーは、オンライン販売の成功に必要となる一連の業務活動はどの部署・チームが担うのがベストなのか、どのように優先順位付けされ、経営資源が配分されるのか、そして全体として自社の戦略的取り組みはどのように業務プロセスに反映されるのか、等の多様な観点を改めて検討する必要があります。新たな業務への移行によって、いくつかのポジションの削減を検討する必要が出てくるかもしれませんが、そうとも言い切れないケースも多くあります。例えば、対面販売を行っていた営業担当者はもはや不要なのではなく、潜在顧客に関する膨大なデータを読み解くために洞察を加え、よりよい意思決定をサポートするという付加価値の高い役割を果たしてくれる可能性があります。

パフォーマンス測定
事業環境と業務内容が変化した場合、変化した後のパフォーマンスをどのように測定すれば良いでしょうか。新たにKPIを設定し、どの指標・データが事業の成功を左右するのかを定義することは、急速に変化する環境で生き残るために重要です。今すぐ行動を起こして新しいデータ要件を把握し、それがどのように報告を決定して、リーダーがより速く、より正確な情報に基づいた意思決定を行い、必要に応じて方針転換をできるようにすることが重要です。

質問する
限られたリーダー達によるアイディアだけではなく、従業員の意見を集めることは決して無駄ではないどころか、リーダー達が思いもよらなかったいくつかの驚くべき洞察を導くことがあります。また、従業員の声を広く集めようとする双方向の対話活動は組織の戦略的ビジョンを従業員に思い出させる良い機会になるかもしれません。 「質問すること」は、組織内で個人的なつながりを作り、従業員のエンゲージメントを喚起する魅力的な方法でもあるのです。 「人生は嵐が過ぎ去るのを待つことではありません。嵐の中でも疾走する方法を学ぶことです。」私たちがこの嵐を共に乗り切ることができるかどうかは、私たちが嵐が吹き荒れる環境にどれだけうまく適応できるか、これまでの方法と組織戦略を新しいビジョンで置き換え、変化し続ける状況に迅速に対応する準備ができているかどうかにかかっているのです。

差別化と顧客価値を徹底する

日本企業のリーダーたちへのメッセージをお願いします。

私は数年間日本に住んでいたことがあり、日本のリーダー達と交流する機会にも恵まれたので、日本のリーダーシップスタイルもある程度理解しているつもりです。その意味では米国や他の地域のリーダー達に対してだけ意味があるものではなく、日本でリーダーシップを発揮される方々にも役立てて頂けるものと思います。競合企業とは差異化され、顧客にとって真に価値のあるものは何かを突き詰めるという原理原則を徹底しましょう。自社の差異化を強調する戦略を決定し、可能な限り最も効果的な方法で差異化を実現するために必要な組織能力を構築します。これは簡単な作業ではありませんが、私の意見では、リーダーがこのプロセスに貢献できる最大の強みは、「アライメント(整合性を取る)」思考とリーダーシップからなる“アラインメント・リーダー”です。アラインメント・リーダーは組織の各要素がどのように組み合わされ整合性が取れれば、戦略を実行し顧客へ価値を提供できるのかを理解している人々です。“アラインメント・リーダー”は、選択とトレードオフの重要性を深く理解し、継続的に効果的なコミュニケーションを行って、組織が取るべき最も重要な戦略的イニシアチブに焦点を合わせ、組織の整合性を整え、戦略の実行を維持することができる人々なのです。




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